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瞳で抱きしめて
第8章 対峙
「樹理さん」


隣の部屋に一人移動した樹理さんを追って、俺も移動する。


他の3人から目が届かない位置にいることを確認して、手を握った。



「どうしたの」



驚いた顔をして俺を見つめる。


人目を気にしたのか、繋いだ手を静かにほどかれる。


俺はすぐにまた彼女の声を手を取って強く握った。



「光?」



怪訝そうに見つめる樹理さんが切ない。

今は少しでも冷たくされたくなかった。



「夜、一緒に俺の家に来て」



「え?」



全く予想していなかった言葉だろう。


ただでさえ俺が自分の家に足を向けたがらないことは、樹理さんもよく知っているはずだ。



「今日誰もいないから」


「お父さんは」


「出張」



そこまで聞いて、樹理さんは察したようだ。


今夜は真理さんと雄介さんも家にいる。


俺は樹理さんと、二人きりになりたかった。



「…なにかあった?」



愚問だ。



「あったよ。ありすぎ」



俺は最後にもう一度、想いを込めるように強く握りしめてから樹理さんの手を解放した。
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