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瞳で抱きしめて
第8章 対峙
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湊斗の部屋の片付けは、物足りないほどあっさりと終わった。



量の少なさに加えて、手伝う人間が四人もいたのだから当然だろう。



そんなわけで、私たちはまだ日が大分高い時間に5人で宅配ピザを囲んでいた。


当初はどこかに食べに行こうという話だったが、真理が作業を終えるなり「あーピザ食べたーい」と呟いたのでこういうことになったのだった。



「湊斗さんの食べたいもの食べてるはずなのに」


「アハハ。ごめんねっ!」


「日本食でもなんでもないし」


「でもピザおいしいじゃん。ねっ、湊斗くん」


「真理ちゃん相変わらずだなぁ」



楽しそうにやり合う真理と雄介を横目に、私は2年ぶりに再会した幼馴染みを改めて観察する。



髪の色も、長さも、2年前から全く変わってない。

あえていつも同じスタイルにしているのだろうか。

目の前の湊斗は、私の記憶のなかにある湊斗と寸分の違いもないままそこにいた。



そしてその姿は、もっと遡るとあの日━━━


私が彼に別れを告げたあの日からも、少し大人っぽくなったことを除いては大して変わっていないのだった。



『樹理っ…!樹理、ここ開けて』


『話したい。樹理っ!』


『お願いだから…!…樹理!』


『俺は別れたくない!……樹理、大好きなんだよ…』



自室に籠城した私の名前を必死に呼ぶ声が蘇る。


声だけで泣きそうな湊斗の顔が分かって、そんな声を聞きたくなくて必死で耳を塞いでいた。


聞きたくないのに湊斗はずっと叫んでいるから、結局彼の発する言葉はほとんど聞こえていて…



私は涙が止まらなかった。


自分への悔しさと、湊斗への罪悪感と、そして、彼に別れを告げてしまった悲しさで。


私も好きだった。



湊斗のことを、大好きだった。


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