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瞳で抱きしめて
第8章 対峙
「樹理さん、食べないの?」
一口だけ取り皿に残ったピザを示して光が言う。
私ははっとして、手元に意識を戻した。
「食べるよ」
「別に狙ってたわけじゃないよ」
急いで食べきった私を可笑しそうに笑う光は、綺麗な瞳を細めてこちらを見つめている。
すっかり私の日常の一部として溶け込んでいる光の笑顔。
私に向ける優しい瞳。
過去を思い出してザワザワと苦い音を出し始めていた私の心が、すーっと落ち着いていく。
光は簡単に私をこうしてしまうから不思議だ。
彼のことを、私はどう感じているのだろう?
かつての湊斗への好きと言う気持ちとは、少し違う気がする。
ではこれは恋心じゃないのだろうか?
だけど、光を愛しく思うことはある。
だったらやはり、これは恋なのか。
考えれば考えるほど、過去と現在を比べれば比べるほど、底無し沼にはまっていく……