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私立S学園高等部
第1章 母の恋人
英司さんは母が入院してからお見舞いの帰り等に私の学校のこととか心配して聞いてくるようになった。
「学校はどう?成績とかどう?」
「うん、大丈夫。学校は楽しいし、成績も特に普通だよ。」
「普通って何だよ」
「前と成績変わんないし、クラスでもまん中位だよ。」
「えーお母さん頭良いのに頑張ったらもっと出来るんじゃないの?」

う…。

「せりなお母さんみたいに頭良くないしお母さんみたいに美人じゃないし。」

いじける…。

「ごめん、ごめん。そういうつもりじゃないんだけど。それにはるかさんは確かに美人だけどせりなちゃんは可愛いよ。」
「ホントに?」
「可愛いよ。」

『じゃあ私が大人になったらお母さんのライバルになっていい?』

言える訳無いんだけどね。
可愛いって言われただけでも嬉しかったけど本当はそこまで言いたかった。

皮肉にも母の入院中に私と英司さんの距離は縮んだ。

英司さんは内部進学の予定だったけどそれでも内部進学の勉強は決して楽じゃないはずで大変な時期だったのに週に一度のお見舞いは欠かさなかった。

そして英司さんと私が見舞いに来ると母は表情に生気が戻った。

でもその頃、母は既に自分が亡くなった後の事を考えるので必死だったのだそうだ。

私も中等部に内部進学することが決まり、英司さんも内部進学で大学に進む事が決まった冬、母は亡くなった。

母が学園の関係者に色々お願いしていたお陰で私が呆然としている間に葬儀だの手続きだのは滞りなく進んでいった。

産まれて初めて父親にも会った。
けど正直母の死のショックが大きすぎて父の事はほとんど意識できなかった。

取り敢えず落第さえしなければこの学校の寮で大学まで進学出来るような手筈は整えてくれ、もし保護者が必要な時は自分が出てくると約束してくれた。




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