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私立S学園高等部
第5章 初恋
「皆さんお早うございます。」
「お早うございます!!」
黒板に『岬はるか』と書いて生徒の方を振り返るその姿にうっとりする。
いや、うっとりしてるのは俺だけじゃない。
男子も女子もうっとりしている。
「普段は高等部で国語を教えています岬はるか、と申します。今年の小学部、三年生、四年生の夏期講座を担当させていただくことになりました。どうかよろしくお願いいたします。」
はるか先生が頭を下げてニコッと微笑む。
「せりなちゃんのお母さん、美人…。」
女子がひそひそ話している。
「皆からしたら三年の岬せりなちゃんのオバチャン、かな?」
せりなちゃんのオバチャンとか呼びたくねー。
俺の中では『はるか先生』だって。

美人、って印象にうっとりしていたけど話は分かりやすく講座も面白かった。
でも講座をちゃんと聞いてなかったら容赦なく怒られる。

俺は物凄く一生懸命、真面目にディベートと小論文に取り組んだ。
難しい…。けどはるか先生はちゃんと真面目にやって出来ないってのは怒らない。
ヒントだけ与えてもう一度チャレンジを促してくれた。

講座は二週間。
あっちゅうまだった。
いよいよ明日が最終日。

あぁ…。はるか先生の講座も終わりかぁ…。
真面目に頑張ってはいたけどはるか先生とほとんど喋れなかったなぁ。
今日はディベートのまとめだったけどあんまり発言も出来なかった…。
そして明日は小論文の発表をするのでテーマに沿った小論文を書いてこいって課題が出ているので必死に机に向かっている。
課題は『未来の夢』。

夢と言われても…。特に無いよ…。
全く浮かばない。
泣きそう…。

図書室にでも行ったら何か浮かぶかなぁ…。
一度部屋に帰ったけど再度小学部に戻り図書室に行った。

図書室は開放されていて、はるか先生が受付をしていた。
俺ともう一人四年生で同じ講座受けてる女子が来ていた。

「あら?阿部君?」
「こ、こんにちは…。」
は、はるか先生がこっち来て話し掛けてきた!!
俺は嬉しいけど緊張と何を話せば良いのか分からなくて泣きそうになってる。
「宿題できた?」
ギクッ!?

「で、出来てません…。」
アホな俺はそう言うと泣き出してしまった…。
「どうしたの?阿部君!?」
苦笑いするはるか先生。
うわー最悪。
俺カッコ悪い。ダサい。
それに宿題出来なくて泣くとかはるか先生呆れるし怒るよ…。

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