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私立S学園高等部
第2章 美人教師と忘れ形見
クリスマスイブに俺は一人ではるかさんの病室にいた。
「メリークリスマス。」
「メリークリスマス。」
はるかさんは手につけていた腕時計を外した。
「これね。亡き父の片身のロレックスなの。」
はるかさんずいぶんゴツい時計してるよなーといつも思ってたけどお父様のお下がりなのか。
「英司君、貰って。」
「え?でもこれ大事な片身なんじゃ…。」
「私の片身として大事に持っていて。」
「はるかさん、そんなこと言わないで…。」
俺は涙ぐんでいた。
「英司君は気付いてるんでしょ?私がそう長くないだろうってこと…。」
予感はしてたよ…。でもそんなことはるかさんの口から聞きたくなかった。
「春の段階で余命半年って言われてたの。だからここまでよくもったと思う。けど、もうそろそろ限界が来てるの…。」
「はるかさん…。」
俺は気がつけば嗚咽していた。
「英司君は大丈夫だと思う。私がいなくても。」
「そんなこと言わないでよ…。嫌だよ俺…。」
「私だって嫌よ、英司君と離れるの…。もっと生きたいよ…。」
俺は子供なんだよ、本当は。
はるかさんの方が辛いのに。
「でも私の体は限界が来ている。そして英司君、貴方は生きないといけない。」
はるかさんは俺の手にロレックスを握らせた。
「大事にしてね。」
俺は泣きながらうなずくことしかできなかった。

「そして英司君。私の最後のお願いがあるの。」
「何?」
「厚かましいお願いだとは分かってる。せりなのこと。」
それまではるかさんは穏やかな顔をしていてなんて気丈な人なんだろう、と思ったけどせりなちゃんの話になると目を潤ませた。
「せりなを守って下さいませんか?」
母親の顔だ。
三人でいる時、母親の顔をしつつも俺の恋人としての顔もキープしてるはるかさんだけど、今は完全に母親の顔だった。
「せりなは…。英司君のことが好き…。それは女として…。」
「えっ!!まさか…。」
「ううん、分かるの…。せりなは小学生だけどもう女になりつつある。せりなが英司君を見る目は恋する目だなぁ…。私が英司君のこと好きだから余計に分かるの。」
突然のはるかさんの話に俺は驚きを隠せなかった。
「英司君はまだせりなが子供だと思ってるからそういう目で見てないのかも知れないけどせりなが大人になったらそれこそ私なんかよりお似合いだと思う。」
「何を言うんだよ…。」
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