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猫好き男子と大人な部長
第15章 大人な部長
「ある日、私はついつい興味本位で、そのオルゴールを鳴らしてみたくなってしまった。オルゴールは、いつもリビングの窓際にあるチェストの上に置かれていて、誰でも触れる状態でね。その場には、妹と母がいたんだけど、私は黙って立ち上がると、チェストへと近づいていき、そのオルゴールを鳴らそうとした。だけど……」

 ここで、ほんの僅かではあるが、高倉の表情が憂いの色を帯びた。

 何が起きたのか薄々は想像できた架恋だったが、口を挟まずに黙っている。

 高倉は少し悲しげに言葉を続けた。

「手元が狂ったせいで、オルゴールが床に落ちて割れてしまったんだ。私はパニックに陥り、恥ずかしながら何一つ言葉が出てこなかった。でも、優しい母がすぐに『大丈夫。びっくりしたね、佳樹』と言って私を慰めてから、壊れてしまったオルゴールを拾い上げた。そこでようやく少し我に返った私は、妹に対して申し訳なくて、申し訳なくて、今にも泣きそうな妹に向かって、『ごめん』と何度も謝った。妹も、母譲りの優しい性格をしてるから、『いいよ、もう』と言ってくれたけど、その目からは涙がとめどなく流れだしていたし、傷ついているのは、幼い私にも明白だった」

 高倉は悲しげな表情のままだ。

 架恋は心の中で「部長も優しい性格をされてるじゃないですか。部長のその性格は、お母様譲りだったのですね」などと思っていたが、もちろん口には出さない。

 いつしか、前方にショッピングモールの建物が見えてきている。

 高倉はさらに続けた。




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