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口琴
第6章 初恋
少年は、苦笑いする。

「お前んちも、親が再婚したんだな…。俺んちもだ…。でも、今の母さんも優しいし、何とか上手くやってる。俺の本当の母親は、俺が二歳の時に親父と離婚したから、顔も覚えてないんだ…。写真も無い…」

「そう…。でも、新しいママが優しくて良かったね。私の本当のパパは、私が二歳の時に交通事故で亡くなったんだって…。オーストリア人なの。ウィーンの音楽大学でママと出会ったそうよ。パパはピアニストだったの。今のパパは、私が五歳の時にママと結婚したの。でも…」

そこから、蕾の言葉は続かなかった。

「…上手く…いってないのか?今のパパと…」

「…………」

様々な思いがまた蕾の胸に押し寄せ、涙が零れた。

この少女の抱えているものが、小さくはないと感じた少年は、思わず蕾の涙をそっと指で拭った…。

「あっ…!ごめん…」

無意識にしてしまった大胆な自分の行動に、ハッと我に返り、慌てて手をポケットに突っ込んだ。

「い、いつだって親の都合で子どもが犠牲になって、その度に我慢を強いられるんだ…。」

「…うん…ありがとう。でも、やな事ばっかじゃないよ?いい事もあるよ?ほら、こうしてお兄ちゃんに会えたから」

「何だよ…それ…。そんなこと、いい事でも何でもねぇじゃんか…」

「いい事だもん!」

「ッ………」

「そうだ!お兄ちゃん、おにぎり一緒に食べよ?」

「え?いいよ俺は…。何だよ、独りぼっちでピクニック?すんげぇクールじゃね?あはは」

少年は動揺を悟られないように茶化すが、蕾はニッコリ笑ってサラリと交わした。

「うふふっ。でも一人じゃ食べきれない。お兄ちゃんどっちがいい?梅干し?昆布?」

「…しょうがなぇなぁ…じゃあ…梅干し」

「うふっ。はい、どうぞ!」

二人は、美味しそうにおにぎりを頬張った。

「ねぇ、お兄ちゃん。やっぱ、お名前教えるのやだ?…」

「…え?…あぁ…名前は…大崎 聖。…中二。十三歳…。聖夜の『聖』って書いて『ひじり』…」

「おおさき ひじり君…。いいお名前ね?」

「単純な由来さ。クリスマスイブに産まれたからって…バレバレな理由…。お陰であだ名は『ヒジキ』だ。だから自分の名前教えるのやなんだよ…」

「素敵!クリスマスイブがお誕生日だなんて!」

「何でも"素敵"って言うのな?お前」

「だって、ほんとに素敵なんだもん!」
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