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口琴
第9章 逃避
敬介は、新聞に隠れるように首をすくめた。
「あなた?…どういう事ですか?」
敬介は新聞の上端から、チラッと梨絵を見ると、開き直ったように新聞を畳み、ドンと乱暴に机に叩きつけた。
「チッ…うぜぇなぁー。社長が大勢の少女達の中から、うちの蕾を養子に選んで下さったんだ。願ってもねぇ話だろ?それに梨絵、お前にとっても好都合なんじゃねえか?ん?へッへッ…。淫乱娘がまた俺の上に跨がって来る前に、厄介払いしといた方がいいだろ?俺だって、毎晩こんなロリまんこに迫られたらたまったもんじゃねえ」
梨絵は床に崩れ落ち、肩を震わせた。
蕾はこの場にいられなくなり、逃げるように外へ駆け出した。
「蕾は、躾の仕甲斐があるそうだよ。幼いうちに、たっぷりと社長好みの躰に躾して頂けるんだ。蕾の躰を一番お気に召されたらしい。ありがてぇ話だぜ。
初潮が来たら、すぐに子種を着けたいそうだ。ヒッヒッ…。
それに、俺達も悠々自適に暮らせる…。おい、五億だぞ?五億!すげえだろ?
あいつだって、中條家に貰われる方が、何不自由なく暮らせるんだ。あいつの幸せの為にも…。な?梨絵…。
それにあのエロ社長、この話を断るなら、梓をよこせって言いやがったんだ!酷でぇ野郎だぜ、まったく!梓には指一本触れさせやしねぇ!」
梨絵は、この狂った男達と、今の自分を嘆いた。
梨絵の中に、二つの思いが葛藤していた。
母として、蕾を何としても守らなければ…と言う思いと、敬介と蕾との忌まわしい関係への懸念と。
梨絵は身心の疲労と動揺と混乱で、まともな思考力を失っていた。
この苦しさから、解放されたい…。
なら、いっそ敬介の言う通りに…。
涙が次々と溢れた。
蕾の愛らしい笑顔が、梨絵の脳裏を過る。
…ダニエル…あの人に似た笑顔…。心から愛したあの人に…。
梨絵はその瞬間、躰に衝撃が走り、思わず駆け出していた。
「梨絵?!」
…守らなきゃ!
どうして、迷ったりしたのか。
答えは明確だった筈。
養子?こんなの人身売買だ!
妊娠させるだなんて、あり得ない!
幸せ?ある筈がない!
私…なんて馬鹿な事…。
何故、蕾を信じなかったの?
また、あの時と同じ過ちを繰り返すつもり?
また、大切なものを無くしてもいいの?
梨絵は、自分の愚かさと弱さを心底悔いていた。
「蕾っ!蕾ちゃん!どこなのっ?!」
「あなた?…どういう事ですか?」
敬介は新聞の上端から、チラッと梨絵を見ると、開き直ったように新聞を畳み、ドンと乱暴に机に叩きつけた。
「チッ…うぜぇなぁー。社長が大勢の少女達の中から、うちの蕾を養子に選んで下さったんだ。願ってもねぇ話だろ?それに梨絵、お前にとっても好都合なんじゃねえか?ん?へッへッ…。淫乱娘がまた俺の上に跨がって来る前に、厄介払いしといた方がいいだろ?俺だって、毎晩こんなロリまんこに迫られたらたまったもんじゃねえ」
梨絵は床に崩れ落ち、肩を震わせた。
蕾はこの場にいられなくなり、逃げるように外へ駆け出した。
「蕾は、躾の仕甲斐があるそうだよ。幼いうちに、たっぷりと社長好みの躰に躾して頂けるんだ。蕾の躰を一番お気に召されたらしい。ありがてぇ話だぜ。
初潮が来たら、すぐに子種を着けたいそうだ。ヒッヒッ…。
それに、俺達も悠々自適に暮らせる…。おい、五億だぞ?五億!すげえだろ?
あいつだって、中條家に貰われる方が、何不自由なく暮らせるんだ。あいつの幸せの為にも…。な?梨絵…。
それにあのエロ社長、この話を断るなら、梓をよこせって言いやがったんだ!酷でぇ野郎だぜ、まったく!梓には指一本触れさせやしねぇ!」
梨絵は、この狂った男達と、今の自分を嘆いた。
梨絵の中に、二つの思いが葛藤していた。
母として、蕾を何としても守らなければ…と言う思いと、敬介と蕾との忌まわしい関係への懸念と。
梨絵は身心の疲労と動揺と混乱で、まともな思考力を失っていた。
この苦しさから、解放されたい…。
なら、いっそ敬介の言う通りに…。
涙が次々と溢れた。
蕾の愛らしい笑顔が、梨絵の脳裏を過る。
…ダニエル…あの人に似た笑顔…。心から愛したあの人に…。
梨絵はその瞬間、躰に衝撃が走り、思わず駆け出していた。
「梨絵?!」
…守らなきゃ!
どうして、迷ったりしたのか。
答えは明確だった筈。
養子?こんなの人身売買だ!
妊娠させるだなんて、あり得ない!
幸せ?ある筈がない!
私…なんて馬鹿な事…。
何故、蕾を信じなかったの?
また、あの時と同じ過ちを繰り返すつもり?
また、大切なものを無くしてもいいの?
梨絵は、自分の愚かさと弱さを心底悔いていた。
「蕾っ!蕾ちゃん!どこなのっ?!」