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口琴
第12章 惜別の涙
「…お前と二人で話すのなんて、久しぶりだな。ちょっとドライブでもしながら…な?あ、そうだ、母さんが心配しないように電話しておくから待ってろ」

「………」

聖は無言で窓の外を見つめ、惣一とは目を合せようとしない。

惣一はガラケーをポケットから取り出すと、朋香に電話をかけた。

「……私だ。聖、見つかったよ。あぁ、心配ない。大丈夫だ。少し聖と話してから帰るから…。あぁ、そうしてくれ。それじゃぁ」

携帯をポケットに入れながら、そっぽを向く聖を見て言った。

「…母さん、飯作って待ってるからって。…男同士でドライブだなんて、なんか気色悪ぃな?はははっ…」

「………」

惣一の必死のジョークも上滑りして、余計に重苦しい空気が車内に澱む。

惣一はハザードランプを切り、右にウインカーを出した。

車がゆっくりと発進する。

聖は相変わらず窓の方を向いたままだったが、景色など何一つ見ていない。

かれこれ二十分くらい走った頃、話を切り出すきっかけを作ろうと、惣一がゴホッと一つ咳払いした。

「…なあ、聖…」

沈黙後の第一声は、痰が絡んで掠れ、歯切れの悪いものだった。どうせこれから話す内容も、景気の良いものではないのだから…と惣一は言葉を続けた。

「…あの子の事、好きなのか?」

「………」

「綺麗な子だな。でもまだ小学生なんだろ?」

「………」

「…聖?…」

「…何だよ…黙ってた事があるって…話があるって言ったのはそっちだろ?俺にばっか質問すんなよな!さっさと話すなら話せよ!」

聖は声を荒らげたが、依然として惣一を見ようとしなかった。

「…あぁ、そうだった。…悪かったな…」

惣一は大きく息をつくと、静かな口調で話始めた。
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