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欲情三分間〜ヨクジョウサンプンマ〜
第3章 ××××××××
『はーい、眠剤の時間ですよ~』
病室に入る。


4人部屋だ。


惚けた表情の年寄りがふらふら起き上がる。



俺は腕時計を見た。

午後8時。




______夜勤の日は気が重い。

なぜならば……………

「高倉さん、高倉さん………」
「胃が痛いんだよ、ど~したのかしらねぇ」
「饅頭はどこにありますか?」


年寄りたちが口ぐちに言い募る。(高倉さんは高倉健のことらしい)

俺が看護師をしているこのさかがみ病院は、
内科・神経内科・心療内科•皮膚科を診るという謂わば『何でも屋病院』。




32歳、
勤務歴8年。


年寄り大国となった昨今、
入院している患者の8割が高齢者だ。


『ハーイ、ミヤタさんお口開けて~。
そうそう、上手しょうずー』


棒読みである。



85歳のミヤタさんは金魚のように口をパクパクさせている。




(あ~あ………………
明日になんなきゃサキちゃん来ないしなぁ)

サキちゃんは3年目の看護師だ。

ノリが良く、ぱっちり二重の美人。




朝、申し送りで二言三言交わすだけ。


俺は左手薬指に光るシルバーリングをぼんやり眺めた。
家では5歳と3歳と1歳の娘が寝るころだろう。
嫁は叱りながら入浴させてるだろーな。


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