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第9章 そのきゅー

ベッドは新品まんまのようだし、
キッチンもキレイだ。


翔汰と拓矢はワンルームから運び込んだ自分の衣類や小物、
家電などをそこここに置く。

『……あっ！
拓！衣類用タンスに雑誌を仕舞うんじゃーない！
雑誌はこっち。
小さい棚だっつの』



『…………うーん……』

分かったのか分かってないのか曖昧な「うーん」。



『下着類と洋服は分けろー！

どーして一緒くたに詰め込むんだー』



拓矢の片付け下手は健在だった…………



引っ越しといってもワンルームにあった物を運び入れるだけ。


甲斐からは「午後イチで撮影あるからなー？
迎えに行くから忘れんなよ！」
とキツく言われている。


既に甲斐にもバレた仲だし、
社長も気付いたから褒美が戸建てだったのだろう。



〔売名のための偽り〕でもなく………
これからは臆すことなく拓矢とふたりで生活できる。

翔汰は拓矢に怒りつつも口元はにやけていた。