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イカせ屋稼業
第9章 そのきゅー
出窓を開けて雑巾がけをした。


棚の埃も叩きとる。


バスルーム・トイレを手早く掃除し、
昼にはひと段落ついた。


2階のベッドに横になって『腹へったなー。何か作ってよ♪』と拓矢。


『………拓、
ほとんど動いてないのによく言えたな……
よっし、待ってろ』


翔汰は1階のキッチンにて湯を沸かした。

鼻歌を歌いながら調理し、どんぶり鉢を両手に持って2階へ上がる。


『引っ越し当日はこれっしょ!』

『お?
すげー、蕎麦だ。
温玉乗ってる』

『引っ越し蕎麦♪♪
食おーぜ』

ふたりはしばし無言で蕎麦を啜った。

『………なぁ翔、
足りないモノって何かある?テーブルが無いよなぁ』

『んー。
1階キッチン横に四つ足テーブルは欲しいよね。
その方が食器片付けしやすいし』


『……主婦みたい(苦笑)』拓矢がプッと噴き出した。

『良いだろ?
主婦できるヒト一家にひとり居ると便利だぞ』


ユルく綻んだ空気感。

ふたりは、これから始まる暮らしに期待を膨らませた。
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