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第9章 そのきゅー

『医者から念のため半日休んでから帰れって言われてね。

篠ユリカの事務所には被害届出すからって圧かけておいたよ。

いくら人気女優でも、プロ失格だ。
相手男優の肉体に傷つけるようじゃ、やってけないだろうな。

拓矢は治るまで休養だ』
甲斐がやれやれと肩を落とす。


『えっ？
まじですか……』
拓矢が言う。


『頬の傷、メイクで隠せないこともないけどな。
打撲とヒビは日にち薬だから仕方ない。
１週間休め』



『じゃ俺は単独の仕事のみですか？』
翔汰が言う。


『そうだな。
スケジュール調整し直すわ、すぐに』


『――甲斐さん。
思いついたんですけど』
拓矢が頭を起こした。


『何だ、拓矢』


『2日だけ安静にしたあと、
〔傷モノV〕撮りません？
包帯ぐるぐる巻きの男が主体のハメ動画。
もちろん翔汰と』



『え？』


『ダメですかね？
ケガってちょっとエロい気がして。
実際打撲してるとリアリティーありそうで』




翔汰は『ダメだって！
治さないと！』
と制すが、
（いいかもしんない）と思った。


甲斐は腕を組んで『うーん………良いアイデアだなぁ…

ヒビは肘だけだからなぁ。医者に固定してもらって、考えてみるか』
と唸る。
『社長に相談してみるよ』そう言ってスマホを取り出して病室を出ていく。