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イカせ屋稼業
第10章 〜番外編〜


「………えっ……
手術?」
翌日登校すると、
裕希が「緋路、手術することになったらしい」という。


拓矢の机に腰かけて、
裕希は腕を組んだ。

「飲み込んだものが血流を流れて脚まで来たんだってさ。小さい頃に誤飲しちゃってたんだって。
上半身だと内臓があって取り難いから、ある意味ラッキーなんだって。
今朝緋路から連絡があったんだ」



「………そっか……」


―――俺には言ってくれないんだな。

いじけたように、
そう思う。
ショックだった。




「あのーぅ、曽我さんていますか」
教室の入り口で1年の女子が顔を覗かせる。


登校してきたクラスメイトたちが、
チラチラ拓矢を見た。



「俺だけど」
拓矢は立ち上がり、
廊下に出た。



見たことが無い女子だ。
もっとも殆どの生徒をあんまり覚えてないけれど。
「あの、これ預かってきたんです。
優衣から…」
手紙らしき封筒を渡された。
女子は「言付かっただけなんで、じゃ失礼します」とバタバタ駆けて行った。



「―――1年にも手ぇ出してんだね」
顔を上げると、
菊間亜美が半笑いで立っていた。
登校してきたところらしい。


始業前で、教室も廊下もざわついている。
「前から思ってたんだけどさぁ。
拓矢くんってそんなにH好きじゃないよね?」


「へ」



「Hていうか、
女子のこと?
女好きっていうのと違う気がした。
あてずっぽだけど」
亜美は上目遣いでこちらを見る。



――不快感。


それと、誰にも気づかれないように隠していた部分を突かれた衝撃。

「んなことねーよ、
女好きだから遊んでんの」突っ慳貪にいうと、
亜美は「なーんだ、そうなんだ」
と納得したようで…


「んじゃあたしとHしよ?」
と耳打ちしてきた。


拓矢は予想外のアピールに怪訝な顔をした。
「Hって……
付き合わないよ?絶対」


「うん!
完全割り切り。どぉ?
好きな人出来たら止めるから、Hだけ。拓矢くんも好きな人出来たら止めなよ。………放課後けっこー退屈でさぁ」

亜美はドアに凭れて言う。


「(どうでも)いいよ。
担任来たぞ」


あ、やば、と席に着く亜美。


ガタガタと椅子が鳴ってミニホームルームが始まる。

緋路の席は、
空いていた。

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