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イカせ屋稼業
第10章 〜番外編〜
「本当に、ごめんなさい………」
翌日、俺は区立病院の待合室にて緋路のお母さんに頭を下げた。
緋路の脹ら脛に重心をかけた際に、
針が身を抉ったらしい。
手術日を変更して今日の午前中になり、
緋路は下半身麻酔をかけて手術を受けている。
俺は担任に事情を話して休んだ。
そして緋路の手術に付き添った。
「拓矢くん、気にしないで。
多分、あのままだったら遅かれ早かれ抉って出てきちゃってたよ。それに昔飲み込んだのは緋路なんだから…おばさんのミスだわ。
ね?気にしないでね」
緋路のお母さんが俺の肩を撫でた。
「泣かなくていいから」
俺は涙を溢した。
ごめんなさい、ごめんなさい……と繰り返して。
幼稚園児みたいに泣いた。
3時間後、手術室から医者が出てきた。
「取り出せましたよ。
ほら、こんなのが入ってました」
掌には長さ2センチほどの針がある。
「………まぁ………」
緋路のお母さんは目を見開いた。
「こんなものが血管にあったなんて!」
医者は「抉って逆に良かったですよ。
流れたままだったら、
手術日までに違う場所へ流れる可能性がありましたしね」とサラッと言う。
「バスケットの試合、
来月でしょう?
縫い傷の経過を見ながらですけど、控えなら大丈夫ですよ」
「「えっ……」」
俺と緋路のお母さんの声が被った。
「後で緋路くんに伝えてあげて下さい。
喜びますよ。但し、激し過ぎる動きはNGです。足首も軽く捻ってますからほどほどに」
緋路のお母さんは「良かった……
あの子、落ち込んでたから。ありがとうございます」と医者に頭を下げている。
手術室からベッドごと出てきた緋路。
「すげー、
上半身麻酔ないから手術音全部聞こえちった」
と笑いながら言う。
「来月の試合、控えなら出られるってお医者様言ってたわよ」
緋路のお母さんがそう言うと、
「まじっ??
やったー!!」緋路は寝たままガッツポーズをした。