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イカせ屋稼業
第12章 そのじゅーいち
同じ頃____。

榊百合絵は、
喫茶店の個室にいる。





ジャスミンティーを飲みながら人を待っていた。


待ち合わせ時刻から25分過ぎていた。
(遅いわね…………何かあったのかしら)



百合絵らしくなく不安になる。


夜会巻き・紫色のルージュはいつも通りだったが……。





個室のドアがカチャリと開いた。
『___待たせて済まない!』


息を切らして昴【タカシ】が入ってきた。

百合絵は安堵し、
『よかった………!』と溢す。


細く上背のある男。
ダークグレーのスーツが様になっている。
長髪を一つに束ね、
背筋がピンと伸びて威厳を感じる。


足音を立てずに向かい席に座る昴。


『よかった、って何が?』



義理妹に話しかける昴の瞳には朗らかさが滲む。



『いいえ、
何かあったのかと思ってしまって』
百合絵も兄の伴侶には素直である。

普段は社長として弱音など誰にも吐かない。



今まで弱音すら感じたこともなかった。



『らしくないなぁ(笑)

ま、さすがに師橋が相手じゃねぇ………。
遅れたのは主要メンバーを躱すためだ。
連絡すればよかったな。

調べたぞ〔nine〕。』




そう言って昴は書類をテーブル上に置く。


『師橋のやつ、
S会に借りがあるようだ』


『…………S会………!!』
百合絵は唾を飲み込んだ。



S会というのは、
日本津々浦々に支部を持つ指定暴力団。
一般人でも知っているはずだ。

発砲事件・殺人事件・誘拐窃盗………
何かしらの事件でたびたびニュースに上がる。
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