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イカせ屋稼業
第14章 そのじゅうに
『ほい、おつかれー。飲みな~』甲斐が後部座席にポカリを2本投げる。



「『ありがとうございまーす』」

翔汰は喉に流し込んだ。


拓矢はボトルを頬に当てている。

熱いらしい。




『社長からのお達し。
____KANAMEは〔nine〕社長・師橋の実の子だそうだ。
当のKANAMEは知らないんだとさ』



ぶほっ。
翔汰は噴いた。

『げほっ、がはっ…………
本当に?
知らないなら…………』

『なんで〔nine〕背負ってるんだろうね?
KANAMEは』
拓矢が続きを代弁する。






『そこはまだ調査中だ。
社長の師橋、S会の関西支部の〔張〕ってヤツと恋仲になった挙げ句逃げられたんだとよ。
億単位の借金背負わされて』



『____だからか!
ヤツら、犯罪紛いの手口で女優を集めるのは』

翔汰はボトルをギュッと握る。

ポカリが溢れそうになり慌てて緩めた。



『どんな手を使っても億稼がなきゃ、
師橋は海の底に沈められるだろうな』
甲斐の口調も重い。




『S会………ヤクザかぁ。
〔はり〕ねぇ』
拓矢が腕を組んだ。



『卑怯なやり口だよ!
それは個人的な問題じゃん!
だからって志願してない一般人の女の子を無理やりAVに出して良い訳じゃない』

翔汰は腸が煮えくりかえる。





『実はな。社長のお兄様が探偵事務所をしてるんだ。
内偵調査をしてくれてる』

バンワゴンは深夜の道路を走る。

眠らない街。深夜も煌々としている。

『あ、さっきイージーさんが言ってましたよ』


『聞いてたか。
探偵事務所をしてるなら何だか心強いよな』

甲斐も同じ感覚のようだ。


『だけど、心してかからないとな』
甲斐の呟き。


それは、ふたりにも強くのしかかった。




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