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第16章 そのＧＯ

(あれ、見間違いだな………………）
ベッドごと運ばれてゆく際の百合絵の笑い顔。



腕章をつけて、
喪服姿の翔汰は献花台に花を置いた。



社葬である。




昨日一日で皆なんとか落ち着き、
甲斐から「社長はもう長くないと知っていたんだな。
手紙があったよ。
看護師が預かっていたそうだ」と百合絵直筆の手紙を渡された。



〔翔汰&拓矢へ

これを読んでるということは、
あたしは彼岸に向かったわね？

あなたたちと出逢って、私の仕事はそれまで以上に愉しいものになりました。

ゲテモノ揃いの〔ミントリア〕に新しい風を吹かせたのはあなたたちよ。

甲斐に任せてあるけれど、
翔汰も拓矢もこれからは自分で考えて動いて仕事を取りなさい。

甘くない世界よ。分かっていると思うけど、
新人は羽虫のように次々出てくるの。

だけどあなたたちらしさだけは失わないでね。

分かってる？

翔汰も拓矢も、
顔つきが全く違ってきたこと。

ふたりの絆がそうさせたのね。

色んな女優がいるでしょう？色んな男優がいるでしょう？
あなたたちみたいに、〔本物〕はどれくらいいるかしら。

誰かに追われて、『あの人のようになりたい』とずっと憧れられる存在になりなさい。

お互いを信じられなくなったり、
自分を信じられなくなったら思い出して。

あなたたちが初めて絡んだ日のことを。もがきながら、試行錯誤を繰り返した最初の頃を。
戻りながら進んでいくのよ。
周りに沢山の支援者がいるから、力を合わせて〔ミントリア〕を守って下さい。

あなたたちに逢えてよかったわ。
じゃあ、彼方で見張ってるからね！あくまで

　　　　　　　　　　　　　　　榊百合絵〕