この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第5章 第二話・其の弐

お彩が喜六郎の居間兼寝室の前に立った時、障子はきっちりと閉じられていた。
小さく息を吸い込んで障子を開けようとしたそのときのことだ。ふいに部屋の中から烈しい声が飛んできた。
「おとっつぁんまで、あんな貧相な小娘の肩ばかり持つしさ。だから、あの子が奉公人のくせに、つけ上がるのよ」
まるで吐いて捨てるような口調に、お彩は身の内から怒りの焔が燃え上がるのを感じた。確かに小巻の言うとおり、お彩は「花がすみ」の使用人である。だが、お彩は「花がすみ」の主人喜六郎に仕えているのであり、娘の小巻に使われているわけではない。
ましてや、小巻はとうに他家に嫁した身であり、正確に言えば、「花がすみ」とは何の拘わりもない人間だ。そんな小巻をいつまでも「花がすみ」のお嬢さま扱いする方がおかしい。
小さく息を吸い込んで障子を開けようとしたそのときのことだ。ふいに部屋の中から烈しい声が飛んできた。
「おとっつぁんまで、あんな貧相な小娘の肩ばかり持つしさ。だから、あの子が奉公人のくせに、つけ上がるのよ」
まるで吐いて捨てるような口調に、お彩は身の内から怒りの焔が燃え上がるのを感じた。確かに小巻の言うとおり、お彩は「花がすみ」の使用人である。だが、お彩は「花がすみ」の主人喜六郎に仕えているのであり、娘の小巻に使われているわけではない。
ましてや、小巻はとうに他家に嫁した身であり、正確に言えば、「花がすみ」とは何の拘わりもない人間だ。そんな小巻をいつまでも「花がすみ」のお嬢さま扱いする方がおかしい。

