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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

お彩は一膳飯屋「花がすみ」に通いで賄いの女中として奉公している。伊勢次は左官をしており、「花がすみ」の常連だ。お彩は「花がすみ」の近くの長屋に一人で暮らしているが、ある経緯があって二年前に家を出た。その理由というのは、実の父である飾り職人の伊八に対してお彩が道ならぬ想いを抱いてしまったというものであった。
結局、そのお彩の想いは恋ではなく、多感な少女期特有の憧れだと判ったものの、当時のお彩は母を亡くしたばかりで、そのことについて相当に悩んでいた。実の父親に惚れるということが到底尋常ではないと思い、狭い裏店の一つ屋根の下で父と顔を合わせるのが苦痛でならなかった。そのために父に対して反抗的な態度を取ったり、無視したりを繰り返した挙げ句、ある日突然、家を飛び出してしまった。
結局、そのお彩の想いは恋ではなく、多感な少女期特有の憧れだと判ったものの、当時のお彩は母を亡くしたばかりで、そのことについて相当に悩んでいた。実の父親に惚れるということが到底尋常ではないと思い、狭い裏店の一つ屋根の下で父と顔を合わせるのが苦痛でならなかった。そのために父に対して反抗的な態度を取ったり、無視したりを繰り返した挙げ句、ある日突然、家を飛び出してしまった。

