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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

だが、父はそんな娘に対して腹を立てるどころか、母親を喪ったばかりの娘の淋しさを理解してやれなかった自分の対応が悪かったのだと思い込み、ずっとお彩の身を案じ続けていた。心配して、たまに様子を見にくる父に素っ気なくしていたお彩だったが、ついひと月ほど前に二年ぶりに父と和解することができた。
実は、その陰には一人の男の存在が大きく影響していた。一年ほど前、お彩が「花がすみ」に勤め始めてほどなく店に姿を見せるようになった男―名前さえ知らぬ客にお彩はひとめで惹かれた。不思議なことに、男はお彩が何かの困窮した状況に陥ると、どこからともなしに姿を現すのだ。そして、お彩の悩みに適切な助言を与える。が、男はお彩の悩みにじっと耳を傾けて何かを言うだけで、けしてそれ以上踏み込んでこようとはしない。
実は、その陰には一人の男の存在が大きく影響していた。一年ほど前、お彩が「花がすみ」に勤め始めてほどなく店に姿を見せるようになった男―名前さえ知らぬ客にお彩はひとめで惹かれた。不思議なことに、男はお彩が何かの困窮した状況に陥ると、どこからともなしに姿を現すのだ。そして、お彩の悩みに適切な助言を与える。が、男はお彩の悩みにじっと耳を傾けて何かを言うだけで、けしてそれ以上踏み込んでこようとはしない。

