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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

それに、丸顔で二十歳には見えない伊勢次はけして男前ではなかったが、女にはそれなりに人気がある。それは伊勢次が近頃になく真面目で、裏表のない誠実な好青年であるからでもあった。仮に伊勢次が遊び人でどんな女にも甘い言葉を囁くような良い加減な人間だったとしたら、喜六郎はお彩との間を取りもとろうなどとは考えなかっただろう。喜六郎には既に嫁いだ娘が一人いるけれど、その娘には引けを取らないほどお彩を可愛がっているのだ。
また、「花がすみ」には現在、その喜六郎の娘小巻が出産を控えて里帰りしている。この小巻がまたとんでもない我がまま娘で、かつては「小町」と謳われたほどの美貌でありながながら、気性は見かけとは雲泥の差であった。お彩のことも仲居というよりは自分自身の使用人だと勘違いし、店の忙しい時分でも平然と身の回りの用を言いつける。
また、「花がすみ」には現在、その喜六郎の娘小巻が出産を控えて里帰りしている。この小巻がまたとんでもない我がまま娘で、かつては「小町」と謳われたほどの美貌でありながながら、気性は見かけとは雲泥の差であった。お彩のことも仲居というよりは自分自身の使用人だと勘違いし、店の忙しい時分でも平然と身の回りの用を言いつける。

