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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

「お彩ちゃん。大丈夫か」
伊勢次はお彩を強い力で引き寄せると、その顔を下から覗き込んだ。
「良いか、あんな話を信じるな。さっきの話なんかデタラメに決まってらあ。親父さんに直接事の次第を訊ねて話を聞くまでは、絶対にあんな馬鹿げた話を信じちゃならねえぜ」
伊勢次はいつも丸い童顔に人懐っこい笑顔の似合う。その伊勢次がまるで別人のような真剣さなまなざしで見つめている。
お彩は首を振った。
「放っておいてよ。伊勢次さんに何が判るっていうのよ。ある日突然、自分がずっと父親だと信じてた人が本当のおとっつぁんじゃないって言われたら、伊勢次さんはどうするの? 何もなかったように、つい前まで何も知らずに呑気に過ごしていたのと同じ自分でいられるの?」
刹那、伊勢次が息を呑む。何か言おうとして躊躇っている間に、お彩は伊勢次の手を乱暴に振りほどいた。
伊勢次はお彩を強い力で引き寄せると、その顔を下から覗き込んだ。
「良いか、あんな話を信じるな。さっきの話なんかデタラメに決まってらあ。親父さんに直接事の次第を訊ねて話を聞くまでは、絶対にあんな馬鹿げた話を信じちゃならねえぜ」
伊勢次はいつも丸い童顔に人懐っこい笑顔の似合う。その伊勢次がまるで別人のような真剣さなまなざしで見つめている。
お彩は首を振った。
「放っておいてよ。伊勢次さんに何が判るっていうのよ。ある日突然、自分がずっと父親だと信じてた人が本当のおとっつぁんじゃないって言われたら、伊勢次さんはどうするの? 何もなかったように、つい前まで何も知らずに呑気に過ごしていたのと同じ自分でいられるの?」
刹那、伊勢次が息を呑む。何か言おうとして躊躇っている間に、お彩は伊勢次の手を乱暴に振りほどいた。

