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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

幾分くぐもった声で訴えると、男が微笑む。
「嬉しいことを言ってくれるね。約束どおり、ちゃんとこうして来たよ。お前さんが望みさえすれば、私はいつでも逢いにくる」
ひと月前、桜花が満開だった頃、桜の樹の下で男と出逢った。あの折、男はお彩の耳許で囁いたのだ。
―私はいつでも傍にいてお前さんを見守っているよ。お前さんが心から望めば、いつかまた必ず逢えるはずだ。
たったひと言の台詞に縋って、お彩は次に男に逢える日までの時間を紡いできた。先刻、男に言った言葉はけして嘘ではない。今日も一人で少し考えたいことがあったのは確かだけれど、その中には、この場所にいれば男が来るのではないかと思案したからだ。先刻まで川面を眺めながら、いつもふらりと現れ、お彩を慰めてくれる男のことを思った。
「大変だったみたいだな」
男の言葉には心からの労りがこもっている。お彩は涙を拭くと、慌てて男から離れた。
「嬉しいことを言ってくれるね。約束どおり、ちゃんとこうして来たよ。お前さんが望みさえすれば、私はいつでも逢いにくる」
ひと月前、桜花が満開だった頃、桜の樹の下で男と出逢った。あの折、男はお彩の耳許で囁いたのだ。
―私はいつでも傍にいてお前さんを見守っているよ。お前さんが心から望めば、いつかまた必ず逢えるはずだ。
たったひと言の台詞に縋って、お彩は次に男に逢える日までの時間を紡いできた。先刻、男に言った言葉はけして嘘ではない。今日も一人で少し考えたいことがあったのは確かだけれど、その中には、この場所にいれば男が来るのではないかと思案したからだ。先刻まで川面を眺めながら、いつもふらりと現れ、お彩を慰めてくれる男のことを思った。
「大変だったみたいだな」
男の言葉には心からの労りがこもっている。お彩は涙を拭くと、慌てて男から離れた。

