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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

昨夜、陽太と和泉橋で別れた後、お彩はそのまま甚平店に逆戻りした。父の腕の中で思いきり泣くだけ泣いたら、自分でも愕くほど心が軽くなった。その時、お彩は自分の父は伊八ただ一人だと今更ながらに気付いた。その夜は久しぶりに父と共に夕飯を食べながら、母の想い出話など遅くまで語り合った。
やっと家に帰ってきて布団に入ったところに、喜六郎が慌てふためいて駆け込んできたのである。
そして。
お彩にとっては意外なことがもう一つ。
生まれたばかりの赤子をそっと見にいったときのこと、二階の産室で布団に横たわる小巻の傍らには真っ白な産着にくるまれた赤子がいた。まだ顔も真っ赤で、到底美男美女の偉平衛と小巻の間の子とは信じられない。が、産婆は生まれたての赤子は皆、似たようなものだと請け負った。
やっと家に帰ってきて布団に入ったところに、喜六郎が慌てふためいて駆け込んできたのである。
そして。
お彩にとっては意外なことがもう一つ。
生まれたばかりの赤子をそっと見にいったときのこと、二階の産室で布団に横たわる小巻の傍らには真っ白な産着にくるまれた赤子がいた。まだ顔も真っ赤で、到底美男美女の偉平衛と小巻の間の子とは信じられない。が、産婆は生まれたての赤子は皆、似たようなものだと請け負った。

