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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

それでも、母となったばかりの小巻は出産という女の大役を滞りなく終え、やつれてはいたものの、輝くばかりに美しかった。しわくちゃだらけの赤子に乳を含ませながら眼に涙を浮かべている小巻を、お彩は何か神々しいものでも見るような想いで眺めた。これがあの我が儘ばかり言っていた傍若無人な女と同じ者かとさえ思ってしまう。
今は亡き母お絹もああして自分を生んだのかと想いを馳せ、母に感謝せずにはいられなかった。何よりお彩を愕かせたのは、出産直後の小巻がお彩に囁いた言葉であった。
そっと様子を窺っていたお彩を見た小巻は眩しいような微笑を浮かべて言ったのである。
「色々とありがとう」、と。
今は亡き母お絹もああして自分を生んだのかと想いを馳せ、母に感謝せずにはいられなかった。何よりお彩を愕かせたのは、出産直後の小巻がお彩に囁いた言葉であった。
そっと様子を窺っていたお彩を見た小巻は眩しいような微笑を浮かべて言ったのである。
「色々とありがとう」、と。

