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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

月のように冴え冴えとした美貌を持ちながらも、得体の知れぬ危うさ―それは多分に彼の中に巣喰う孤独からきているに相違ない―をまとわりつかせている謎に満ちた男なのだ。そんな陽太を見て、「花がすみ」の常連の一人である伊勢次なぞは〟近づくな〝とお彩に言うのだろう。左官をしている伊勢次は朴訥だけれど誠実な男で、お彩を真剣に想っている。
しかし、お彩が惚れているのは陽太しかおらず、伊勢次から所帯を持とうと求愛されてはいても、断るしかないお彩であった。
その陽太とも最後に逢ったのは、かれこれ二月(ふたつき)も前の若葉の季節であった。あの時、お彩は大好きな父伊八の実子ではないと知り烈しく動揺していた。が、意地を張らずに素直にならなければ、大切な人を失うことになる―、そう言った男―陽太の言葉に背を押され、父の胸に飛び込むことができた。
しかし、お彩が惚れているのは陽太しかおらず、伊勢次から所帯を持とうと求愛されてはいても、断るしかないお彩であった。
その陽太とも最後に逢ったのは、かれこれ二月(ふたつき)も前の若葉の季節であった。あの時、お彩は大好きな父伊八の実子ではないと知り烈しく動揺していた。が、意地を張らずに素直にならなければ、大切な人を失うことになる―、そう言った男―陽太の言葉に背を押され、父の胸に飛び込むことができた。

