この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

なにゆえ、おきみが突然、喜六郎の前に再び現れ、その理由とやらを喜六郎に打ち明けようと思ったは判らないが、もし承平が真に喜六郎の種であれば、おきみが喜六郎の前に現れたのにも納得はゆく。喜六郎の方もまた、態度ではおきみをすげなく追い返そうとしたけれど、その心の底は知れない。
―承平っていうのか、その子は。
そう言って女を見つめていた喜六郎の顔には複雑そうな色が浮かんでいた。あのときの感情がおきみに対しての怒りや憎悪だけではないように思えたのは、お彩の思い過ごしただろうか。
余計なお節介かもしれないけれど、お彩はできることならば、喜六郎とおきみに話し合って貰いたいと思う。八百屋の女房の言い分ではないが、前の女房を亡くして以来、喜六郎は男手一つで小巻を育て、店を守り抜いてきた。
―承平っていうのか、その子は。
そう言って女を見つめていた喜六郎の顔には複雑そうな色が浮かんでいた。あのときの感情がおきみに対しての怒りや憎悪だけではないように思えたのは、お彩の思い過ごしただろうか。
余計なお節介かもしれないけれど、お彩はできることならば、喜六郎とおきみに話し合って貰いたいと思う。八百屋の女房の言い分ではないが、前の女房を亡くして以来、喜六郎は男手一つで小巻を育て、店を守り抜いてきた。

