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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

小巻も嫁いで無事に大和屋の跡取りをあげた今、喜六郎が自分自身の幸せを求めたからとて罰は当たらないはずだ。
「花がすみ」に奉公し始めてからというもの、喜六郎はいつもお彩に気遣いを示してくれてきた。いつか店の売上金が紛失した際、丁度出産に備えて里帰りしていた小巻がお際盗人扱いしたことがあった。そのときも喜六郎だけは端からお彩を信じていると言い続けてくれたのだ。
そんな喜六郎だからこそ、一人の人間として幸せになって貰いたいと、お彩は心から願わずにはおれない。ましてや、承平が本当に喜六郎の子だというのならば、尚更のことだ。喜六郎とおきみたちが今でも憎からず思っているのなら、二人で所帯を持ち、「花がすみ」の暖簾を守りながら親子三人で幸せに暮らせられたら、どんなに良いだろうと思う。
―やれやれ、私もやっぱり、おっかさんの娘なのかしら。
「花がすみ」に奉公し始めてからというもの、喜六郎はいつもお彩に気遣いを示してくれてきた。いつか店の売上金が紛失した際、丁度出産に備えて里帰りしていた小巻がお際盗人扱いしたことがあった。そのときも喜六郎だけは端からお彩を信じていると言い続けてくれたのだ。
そんな喜六郎だからこそ、一人の人間として幸せになって貰いたいと、お彩は心から願わずにはおれない。ましてや、承平が本当に喜六郎の子だというのならば、尚更のことだ。喜六郎とおきみたちが今でも憎からず思っているのなら、二人で所帯を持ち、「花がすみ」の暖簾を守りながら親子三人で幸せに暮らせられたら、どんなに良いだろうと思う。
―やれやれ、私もやっぱり、おっかさんの娘なのかしら。

