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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

むろん、今日は、お彩が求婚を断ったことを気にしているのではと案じて様子を見にきたのだ。そのついでに、やはり、あの男は止した方が良いともう一度、きちんと伝えるつもりであった。
ところが、生憎なことに、「花がすみ」にお彩はいなかった。主の喜六郎に頼み込んで、随明寺まで花見に出かけたという。店が混むのは昼時、夕飯時、それから店じまいの少し前と大体が決まっているので、まさかそのかき入れ時に働き者のお彩が店にいないとは想像もしていなかった。
喜六郎も言っていた。普段のお彩なら、花見時分の忙しいときに、しかも昼の最中に出かけるなんぞ口が裂けても言わないだろうが、何かよほどのことがあったんだろう、随分と思いつめていたようだった、と。
ところが、生憎なことに、「花がすみ」にお彩はいなかった。主の喜六郎に頼み込んで、随明寺まで花見に出かけたという。店が混むのは昼時、夕飯時、それから店じまいの少し前と大体が決まっているので、まさかそのかき入れ時に働き者のお彩が店にいないとは想像もしていなかった。
喜六郎も言っていた。普段のお彩なら、花見時分の忙しいときに、しかも昼の最中に出かけるなんぞ口が裂けても言わないだろうが、何かよほどのことがあったんだろう、随分と思いつめていたようだった、と。

