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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

その日、お彩は昼の忙しい時間帯が過ぎてから、「花がすみ」の主喜六郎に頼み込んで町人町まで出かけた。「ゆめや」の女主人小文はいつもと変わらず鷹揚な態度で、お彩の相談に何にくれとなく乗ってくれた。お彩が父のために半纏を探していると言うと、奧から幾つか持ち出してきて、見せてくれた。お彩はその中でもいちばん大きくて、地も厚めのものを選んだ。父伊八は上背があり、最近では少し肉も付いて貫禄が出てきた。小さなものでは到底身体に合わず、お彩が選んだ半纏でもやっと間に合うといったところだろう。そのところは、お彩が少し手直しすれば十分であった。
お彩は、その半纏を風呂敷に包んで大切に小脇に抱えた。父の歓ぶ顔が眼に浮かぶようで、一国も早くに手渡したと思う。「ゆめや」を出て、町人町のとりわけ賑やかな通りをさしかかったときのことである。
お彩は、その半纏を風呂敷に包んで大切に小脇に抱えた。父の歓ぶ顔が眼に浮かぶようで、一国も早くに手渡したと思う。「ゆめや」を出て、町人町のとりわけ賑やかな通りをさしかかったときのことである。

