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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

―まさか。
信じられないという想いが心の中を駆け巡る。だが、こちらに顔を向けた長身の男は紛れもなく、お彩のよく知る男―、いや、お彩がこの世でたった一人惚れた男であった。
その男、陽太は今、佐田吉と呼ばれた丁稚を従え、お彩とは逆方向に向けて歩き出した。
「行ってらっしゃませ」
年かさの番頭らしい男ともう一人手代らしい若い男まで出てきて深々と腰を折って送り出す様子に、陽太のその店での立場が偲ばれる。お彩は丁稚を連れた陽太が見えなくなるまで、わざとゆっくりと歩いた。つい今し方陽太が出てきたばかりの店の前で立ち止まる。紺地に白地で「京屋」と鮮やかに染め抜かれた暖簾が真冬の風に揺れている。
信じられないという想いが心の中を駆け巡る。だが、こちらに顔を向けた長身の男は紛れもなく、お彩のよく知る男―、いや、お彩がこの世でたった一人惚れた男であった。
その男、陽太は今、佐田吉と呼ばれた丁稚を従え、お彩とは逆方向に向けて歩き出した。
「行ってらっしゃませ」
年かさの番頭らしい男ともう一人手代らしい若い男まで出てきて深々と腰を折って送り出す様子に、陽太のその店での立場が偲ばれる。お彩は丁稚を連れた陽太が見えなくなるまで、わざとゆっくりと歩いた。つい今し方陽太が出てきたばかりの店の前で立ち止まる。紺地に白地で「京屋」と鮮やかに染め抜かれた暖簾が真冬の風に揺れている。

