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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参

母の一生は、まさにその言葉どおりだったように思う。我が身よりも他人のことばかり心配して、上に何とかのつくほどのお人好し。元々、お彩の実の父吉之助に拉致され、手込めにされたのも、母には直接拘わりのない事情が原因だったという。母はいつもの癖で夜泣き蕎麦屋の常連だった客のために奔走したにすぎず、そのことを逆恨みされたのだ。
それでも、母は吉之助の子を生み、伊八に心底愛され、三十年の生涯を精一杯生き抜いた。自分のためというよりは他人のためにいつも生きていたような母だったけれど、母の笑顔はいつもお彩や父の中で、母をかつて知っていた人たちの中で生き生きと息づいている。母は短い女の一生で確かに自分だけの花を咲かせたのだ。
それでも、母は吉之助の子を生み、伊八に心底愛され、三十年の生涯を精一杯生き抜いた。自分のためというよりは他人のためにいつも生きていたような母だったけれど、母の笑顔はいつもお彩や父の中で、母をかつて知っていた人たちの中で生き生きと息づいている。母は短い女の一生で確かに自分だけの花を咲かせたのだ。

