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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参

下方からゆっくりと上ってくる長身の男の貌には見覚えがあった。いや、あるどころか、男は京屋市兵衛その人であった。
「おっかさんの墓参りかな」
市兵衛―陽太は優しげに微笑んでいた。
その魅惑的な笑顔に、お彩の心ノ臓が一瞬だけはね上がる。
この男(ひと)は、どうしてこんなに魅力的に笑うのだろう。改めて男の笑顔に魅了される自分が哀しかった。優しげな顔と声に易々と騙される自分が情けなかった。
叶うことならば、今すぐにでもこの場から逃げ出したかったけれど、無理な話だ。お彩は小さく頷くと、一礼してそのまま陽太の横を通り過ぎようとした。
「待ってくれ」
ふいに手首を掴まれ、お彩は硬直した。
「おっかさんの墓参りかな」
市兵衛―陽太は優しげに微笑んでいた。
その魅惑的な笑顔に、お彩の心ノ臓が一瞬だけはね上がる。
この男(ひと)は、どうしてこんなに魅力的に笑うのだろう。改めて男の笑顔に魅了される自分が哀しかった。優しげな顔と声に易々と騙される自分が情けなかった。
叶うことならば、今すぐにでもこの場から逃げ出したかったけれど、無理な話だ。お彩は小さく頷くと、一礼してそのまま陽太の横を通り過ぎようとした。
「待ってくれ」
ふいに手首を掴まれ、お彩は硬直した。

