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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参

「もう何もかも隠しておくのが嫌になっちまった。正体がバレたのなら、尚更だ。俺はもうお前さんを離さねえ」
陽太の歩みがふっと止まった。お彩もつられてその真後ろで立ち止まる。
随明寺の門前町には、小座敷のある茶屋が軒を連ねていた。花見で賑わう春は別として、そこは男と女の忍び逢う出合茶屋である。
折しも、二人はその場所に脚を踏み入れたのだ。お彩は以前にも陽太と二人だけでこの道を通ったことがある。「花がすみ」のひとり娘小巻の亭主偉兵衛に出合茶屋に連れ込まれそうになったところ、陽太に助けられたのだ。あのときも何か気まずい沈黙に包まれたものだったが、今度はそれ以上の緊張が二人の間に漲っていように思えた。
陽太の歩みがふっと止まった。お彩もつられてその真後ろで立ち止まる。
随明寺の門前町には、小座敷のある茶屋が軒を連ねていた。花見で賑わう春は別として、そこは男と女の忍び逢う出合茶屋である。
折しも、二人はその場所に脚を踏み入れたのだ。お彩は以前にも陽太と二人だけでこの道を通ったことがある。「花がすみ」のひとり娘小巻の亭主偉兵衛に出合茶屋に連れ込まれそうになったところ、陽太に助けられたのだ。あのときも何か気まずい沈黙に包まれたものだったが、今度はそれ以上の緊張が二人の間に漲っていように思えた。

