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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-

自分もまた遠いいつの日か、父と母のように心底から互いを必要とし合える相手にめぐり逢うことができるのだろうか。
お彩は持参した小菊の小さな花束をそっと墓前に供えた。線香の細い煙が白くたなびき、天へと立ち上ってゆく。その先を眼で追いながら、お絹は蒼い空を見上げた。ふいに熱いものが込み上げ、慌てて涙を瞼の裏で乾かす。
在りし日の母の花のような微笑がまざまざと蘇った。
―自分にしか咲かせることのできない、自分だけの花を心に咲かせるんだよ。
母の口癖を思い出しながら、お彩はひっそりと涙を流した。
―おっかさん、私には心の花なんて、到底咲かせることはできそうにないの。心に花どころか、私は自分の中に醜い悪魔を住まわせているんだもの。私は本当にどうかしちゃってるのよ、だって、私はおっつぁんを―。
お彩は持参した小菊の小さな花束をそっと墓前に供えた。線香の細い煙が白くたなびき、天へと立ち上ってゆく。その先を眼で追いながら、お絹は蒼い空を見上げた。ふいに熱いものが込み上げ、慌てて涙を瞼の裏で乾かす。
在りし日の母の花のような微笑がまざまざと蘇った。
―自分にしか咲かせることのできない、自分だけの花を心に咲かせるんだよ。
母の口癖を思い出しながら、お彩はひっそりと涙を流した。
―おっかさん、私には心の花なんて、到底咲かせることはできそうにないの。心に花どころか、私は自分の中に醜い悪魔を住まわせているんだもの。私は本当にどうかしちゃってるのよ、だって、私はおっつぁんを―。

