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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

―ごめんなさい。
そう言おうとした刹那、一年前に求婚をはっきりと断ったときの伊勢次の反応をふっと思い出した。
―謝るなよ。こんなときに謝られたら、俺があんまり惨めになるからさ。
フラレた側としては、当然の台詞に納得しつつも、お彩はその言葉に少なからず傷ついた。一年ぶりに逢う伊勢次に対して、取るべき態度を決めかねて、お彩は途方に暮れた。
そんなお彩を見て、伊勢次が笑った。
「そんなに怖がらないでくれよ」
お彩は丁度、その時、つい今し方出ていったばかりの最後の客が残した丼を片付けにかかっていた。折しも昼どきの慌ただしさがひと段落ついたところである。伊勢次はどうやら、その頃合を見計らってきたようであった。
そう言おうとした刹那、一年前に求婚をはっきりと断ったときの伊勢次の反応をふっと思い出した。
―謝るなよ。こんなときに謝られたら、俺があんまり惨めになるからさ。
フラレた側としては、当然の台詞に納得しつつも、お彩はその言葉に少なからず傷ついた。一年ぶりに逢う伊勢次に対して、取るべき態度を決めかねて、お彩は途方に暮れた。
そんなお彩を見て、伊勢次が笑った。
「そんなに怖がらないでくれよ」
お彩は丁度、その時、つい今し方出ていったばかりの最後の客が残した丼を片付けにかかっていた。折しも昼どきの慌ただしさがひと段落ついたところである。伊勢次はどうやら、その頃合を見計らってきたようであった。

