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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱

その最後の言葉は、お彩の心の救いになるというよりは、むしろお彩にいっそうの哀しみを与えた。
自分は最初から間違っていたのだ。たとえ、お彩にその意識がなかったとしても、お彩の伊勢次に対する仕打ちは、伊勢次の恋心を利用しただけだと言われても致し方ない。
また、お彩の心に大きくのしかかっているのが伊勢次の母おきわの存在であった。伊勢次の母はもう長らく労咳を患っていると聞く。伊勢次は何とかして母の病を治してやろうとできるかぎりのことはしたが、その甲斐もなく町医者からも、あまりもたないであろうと告げられているという。
自分は最初から間違っていたのだ。たとえ、お彩にその意識がなかったとしても、お彩の伊勢次に対する仕打ちは、伊勢次の恋心を利用しただけだと言われても致し方ない。
また、お彩の心に大きくのしかかっているのが伊勢次の母おきわの存在であった。伊勢次の母はもう長らく労咳を患っていると聞く。伊勢次は何とかして母の病を治してやろうとできるかぎりのことはしたが、その甲斐もなく町医者からも、あまりもたないであろうと告げられているという。

