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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱

枇杷は冬に白い花を咲かせ、夏に橙色の実をつける。あの枇杷の樹は、お彩にとっては忘れ得ぬ想い出の樹であった。伊勢次と共に夫婦として過ごした短い日々と彼への無限の想いがこもっている。ついに最後まで男性として愛することはできなかった―そして、それこそが伊勢次を死なせてしまった最大の原因であった―けれど、伊勢次を兄のように慕っていた事実は変わらない。
伊勢次はお彩にとって未来永劫、大切な人であり、紛れもなく美杷の父親であった。伊勢次は自らの存在をお彩の傍から消し去ることによって、図らずも愛する女の心の中に永遠に棲み続けることになったのである。
伊勢次はお彩にとって未来永劫、大切な人であり、紛れもなく美杷の父親であった。伊勢次は自らの存在をお彩の傍から消し去ることによって、図らずも愛する女の心の中に永遠に棲み続けることになったのである。

