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その恋を残して
第5章 それは、おとぎ話だ

 しかし――

「怜未のことを気にしてるのなら、焦らないでください。あの娘、意地っ張りなところがあるから――」

 蒼空は、元気のない俺を案じてくれたのだろう。一昨日、自分が言ったことを、俺が重荷に思わぬように、そう言ってくれたのだ。蒼空は、俺と怜未が心を通わせることを望んでいる。

 だから、その望みを叶えられるのかは、わからなくても、俺は怜未と向き合うことを真剣に考えていた。しかし、誠二さんの話したことは――。

 俺はその全てが正しいとは思ってはいない。そうであるのだが、それでも――俺の考えを根底から、揺るがそうとしていることは確かであった。

「蒼空――」

「はい」

「俺……蒼空が、好きだよ」

 だから、俺は決して揺るがない、その事実だけを口にした。

「私もです――」

 そう言った蒼空は、綺麗だった。綺麗過ぎて、ともすれば現実のものなのか、俺にはわからなくなる程に。だから――


 おとぎ話――奇しくも誠二さんが表現した、その言葉を思い出させるのだ。

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