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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
田口の言ったことも、成程と思わぬ訳ではないのだが……。そう言われて急にイベント事など、思いつく筈もないのだ。例えば今日が偶然、誕生日であるとか、そんな偶然でもない限りは――(そう言えば、俺は彼女たちの誕生日もまだ知らなかったな)。
それじゃあ、自分発信で、何かきっかけとなる事件を起こす? イヤイヤ、無駄にハードルが高くなる上に、失敗すれば逆効果となってしまうだろう。
何か突発的に発生しないかな――イベント。
そんなことを考えつつ、昼休みにパンを買おうと並んでいると――突然、俺は何者かに背中を小突かれた。
「――?」
俺が振り向くと――
「お前、調子に乗ってんじゃねえぞ……」
怖い顔をした男が、背後に立っていた。
はっきり言って、言われもないことだ。俺は調子になど乗っていないのだし、いきなり人を押しておいて、何を言ってるんだとムカつきもする。
「あ――!」
しかし、俺はその男に見覚えがあった。