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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
※ ※
授業が終わった俺が体育館裏に向かったのは、俺が律儀だからではない。正直に言えば、直前までは無視するつもりでいた。あんなの一方的な押しつけであるのだし、行ってもろくな目に遭わないということは、火を見るよりも明らかなのである。
なら、どうして行くのか? それは、内田が俺を呼び出した理由を察してのことであった。
内田は帆月蒼空と付き合いたかった筈である。だが、その告白は俺によって邪魔をされている(と、内田は思っている)。その上で、俺が蒼空と並んで歩く姿でも目撃していたとするならば、その怒りの原因は知れる。
俺からすれば、完全な逆恨みに過ぎない。そもそも初めから、内田にその可能性はなかったのだ。だが、奴の怒りの原因がそうだとすれば、俺が対処しない場合、その逆恨みの矛先が、蒼空(或いは怜未)に向かう恐れがある。
俺は、そうなることだけは避けたいと思っているのであった。
まあ、この気乗りのしないイベントに参加するせいで、今日は一言も怜未と話せぬままに終わってしまうことは確定的だ。そう思えばいい迷惑であるのだし、正直苛立ちも募ってきている。
そんな訳で、割と颯爽とした面持ちで、俺は体育館裏へと向かっていた。