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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
「だ、駄目……」
拒むように身体を固くする怜未を、それでも構わず強く抱いた。
「怜未は、ここにいるよ……」
「え……?」
瞬間――二人だけで取り残されたような、空間。その錯覚の中で。
「蒼空も――俺だって、そう信じてる。意地っ張りで、素直じゃなくて……だけど、誰よりも優しい」
「うっ……」
「例え別人格であったとしても、それは変わらない。今のこの怜未は自分自身が育んだ、怜未そのものじゃないか。だから……俺はこの怜未を、とても大事だと思っている」
「ひっ……ううっ……うっ……」
俺の右肩に顔を埋めたまま、怜未は嗚咽を洩らした。
ずっと自分自身を認められずに、堪えて堪えてそれでも蒼空のことを案じ続けていた。その一人の少女の涙が、俺の制服に染みてゆく。
その様子を見ていたら、俺は言わずにはいられなかった。
「怜未……」
「――?」
「俺、初めて怜未を見た時に――」
「だ……駄目……」
「俺は――」
「それは……言っちゃいけな――」
「怜未に、魅かれたんだ」
俺から顔を離した怜未は、尚もポロポロと涙を流しながら、ただ呆然と俺を見つめていた。
「だから、消えるなんて――二度と言わないでくれよ」
俺は最後にそう言って、怜未をもう一度、抱きしめていた。