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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
※ ※
俺と怜未が校舎を出た時に、車は既に到着していた。沢渡さんの姿が、車の傍らに見えている。
「さあ、今日は帰ろう」
俺は足を進めない怜未を、そう促す。
泣きはらした怜未の顔は、照れくさくもありバツが悪そうにも見える。
「今夜、さ――」
「うん――」
「今夜、蒼空と話す時……私、何て言えばいいの?」
そう言った怜未は、いけないことをした幼女のような表情で俺を上目使いに見ていた。
「ありのままを言えばいいよ。蒼空はきっと喜んでくれる」
「そうなのかな? 難しくて、よくわからないよ」
「…………」
それは、俺も同感であった。
俺は怜未に魅かれていたことを伝えた。それを、一目惚れとまでは言わなかったにしても……。それは、怜未が拒み続けていたことであった。
その理由も今ならわかる気がする。
蒼空と怜未。俺と最初に出会ったのは怜未だった。だから、もし俺が一目惚れをしていたのなら、初めに好きになったのは怜未だったことになる。
それは、自分の存在を否定していた怜未からすれば、あってはならないことだった。蒼空を大事に思えばこそ……。