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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
でも、俺はそのことを、これ以上、掘り下げて考えるつもりはない。当初、俺は彼女たちを一人の少女と思っている。だったら、どちらを先に好きになったのか、なんて考える必要を感じない。今だって、二人で一人なのだから。
そして、怜未は、ようやく自分の存在を肯定しようとしてくれている。だがそれは、まだ強固なものではない。だから、俺はそんな怜未を応援したいと思っている。
「ね、お願い」
車に近づいた時、怜美は再び俺を見た。
「なに?」
「もう一度、名前を呼んで」
俺は、頷き――
「怜未……」
と、その名を呼ぶ。
怜未は目を閉じ、それを噛み締めるように聞いていた。
「私ね。ずっと、そう呼ばれるのが辛かったの。でも、今は――」
「今は――?」
俺と顔を見合わせた怜未は、そっと微笑む。たぶん、それが答えだった。
「じゃあね。松名くん」
怜未は手を振って、車に乗り込んでいった。