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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ
俺は顔面が急速に紅潮してゆくのを感じた。熱くなった俺が怜未に言ったこと――その全てが気恥ずかしく感じられた。もちろん、本気だから出た言葉ではあるが……。
「ありがとうございました。松名くんは、怜未のこと想ってくれていた……」
「……」
俺は何と言っていいのかわからずに――でも、蒼空がそう言ってくれたことが嬉しかった。「ありがとう」と、蒼空なら、きっとそう言ってくれると、俺は信じていたのかもしれない。
「怜未はきっと嬉しかったんだと思います。怜未は、たぶん私の身体を使うことを重荷に感じていたんですね……」
「蒼空は、怜未がその……悩んでいるのを知っていたの?」
「あの娘は決して言わない。でも、感じてはいました」
「そっか」
「だから、松名くんが怜未に言ってくれたことは、私も本当に嬉しいんです」
「蒼空……」
俺が蒼空を見つめると、蒼空は穏やかに笑っている。しかし、何故だか蒼空は急に足を止めた――。
「でも……どうして、だろ?」
蒼空は自分でも不思議そうに、右手で胸を押さえた。
「ん、具合でも悪いの?」
蒼空はそっと首を左右に振り――
「ごめんなさい。大丈夫です。だけど――」
「だけど?」
「少しだけ、妬けてしまいますね」
蒼空は、悪戯っぽく笑い舌を出した。
その顔はあまりに可愛らしく。思わず見惚れていた俺は――蒼空の言葉を深く考えようとは、していなかったのだろうか……。