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その恋を残して
第6章 怜未は、ここにいるよ

「朝から仲がよくていいね」

 俺が席に着くと田口が言った。俺と蒼空が一緒に教室に入って来たことを言っているらしい。

「まあな」

 俺は得意げに、そう言ってみた。すると――

「この野郎!」

 と、田口は俺にヘッドロックを仕掛けてきた。

「イテテ――放せ!」

 俺は堪らず、田口の腕を叩きタップする。実際に昨日の傷のせいもありかなり痛かった。

「ハハ、調子に乗った罰だぜ」

「なんだって、お前に罰せられなきゃならないんだよ?」

 笑う田口を見て、俺はそう非難する。が、田口には他に言うべきことがあったのを思い出す。

「ん、なんだ?」

 黙って、立っている俺を田口は不審そうに見た。

「いや……昨日は、サンキュー……」

 俺はイスに座るどさくさで、そう口にする。

 ガン――突然、頭に衝撃が走る。

「ハア――?」

 意味もわからず、その犯人の田口を見ると、

「照れながら言うな。気持ち悪いだろ」

 自分も少しバツが悪い感じで、そう言っていた。

「でも、効果はあったみたいだな。保健室イベント」

「ああ……お陰様で」

「キスでもしたか?」

「するかっ!」

「まあ、その顔じゃ台無しだよな」

「ほっとけ」

 そんな風に田口にからかわれつつ、俺は割と穏やかな気分であった。

 蒼空と怜未、そして俺――困難はあっても、何とか上手くやっていける。そう感じていたのだろう。

 俺は、この日、色んな場面の蒼空を見ていた。

 授業を真面目に受ける、凛とした後ろ姿。休み時間に木田たちと愉しげに話す時の笑顔。体育の時、額に汗を浮べて走る横顔。

 蒼空の抱えているものは、俺の想像を超えて重いものに違いない。だが、彼女は辛そうな顔を見せることなく明るくに生きている。そして、それは怜未と共にあり続ける決意でもあるのかもしれない。

 だから俺は、蒼空を、そして怜未を支えていこう。今は本気で、そう思っていた。

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