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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
「……」
風邪か。昨日まで元気だったのにな。だけどまあ、沢渡さんもついているし大丈夫だとは思うけども……。
そう思いつつも俺は何気に、沢渡さんが『怜未さま』ではなく『お嬢さま』と呼んだことが、少しだけ引っかかっている。以前ならともかく、事実を知っている俺に対しては……。
そんな風に気になりなりながらも、俺は一人、学校に向かって歩き始めた。
蒼空も怜未もいない一日。それは俺にとって、想像以上に空虚なものとなった。やっぱり、心配。授業が進むにつれ、そんな気持ちが膨らんでゆく。
それは徐々に――逢いたい、という気持ちに変化していたのかもしれない。
授業が終わった。
「オイ――松名?」
いち早く教室を出る俺に、田口が声をかける――が、振り返ることもせず、俺は昇降口へと向かう。
校舎を出る。すると、校舎前のロータリーの傍らに見かけぬ真っ赤なスポーツカーが停車してるのを目にした。他の何人かの生徒たちも、関心を示し群がりつつある。
誰の車かと思ったが、急ぐ俺は車を横目に、その前を走り去ろうとしていた。だが、その時である。
バタン――!
車から降りて来るその人物を見て、俺は目を見張った。
「誠二……さん?」