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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
蒼空と怜未の義兄・帆月誠二は、俺に向かってツカツカと歩を進める。その表情はとても険しい――。
「松名くん――キミは、蒼空に何をした?」
誠二さんは、俺の前に立つなり、そう言った。
「えっ……?」
その意味もわからず、唖然と立ち竦んでいると――
「蒼空じゃなければ怜未の方なのか! 一体、どういうつもりなんだ? キミには、忠告しておいた筈だ!」
誠二さんは興奮している。その事実が、俺の不安を掻き立てた。
「一体……なにが、あったんです?」
「訊いているのは、僕だ!」
その大声に、周りの生徒たちが反応する。誠二さんは、僅かに周囲を気にする素振りを見せた。
「今日、怜未は熱が出て休むと、沢渡さんからは、そう聞いています」
「…………」
誠二さんは、黙っている。
「そうじゃないんですか――彼女は今――?」
そう訊きかけた時――
「僕にもわからないんだよ。だから、こうして君に――」
誠二さんは、俺の両肩をガッと掴む。その表情には、悲壮感が漂っていた。